少子化は反転したか?

  • 隅田(すだ)盛和
  • at 2006/11/22 08:45:19
 厚生労働省が21日公表した人口動態統計速報によると、9月の出生数は、前年同期比4人減の9万4926人で、8月までの7か月連続で続いた出生数の増加傾向はストップした。
 1~9月までの累計の出生数は前年より1万7647人多い83万8505人で、単純に12ヵ月に直すと111万8004人になり、ほぼ04年と同じである。この年の合計特殊出生率は1.29、回復に転じたとする見方がある一方で、昨年の1.25の落ち込みが激しかっただけに、単純な揺り戻しとの見方もある。
 はたして少子化には歯止めがかかったのか。私はそうは思わない。10月より出産一時金が5万円増額され35万円になった。児童手当は所得制限はあるものの小学校6年生まで拡大された。これで子供を産もうという気になるだろうか。
 もちろん、子供を産もうという契機は、経済的な側面だけではない。現実問題として子育てには金がかかる。僅かでももらえるに越したことはないだろう。しかし、直接給付はよくよく費用対効果を考えなくてはいけない。なにしろ、国民から強制的に徴収した税金を使うのだから。
 間接給付は、効果が目に見えにくい。政治家は選挙の時のアピールを考えるから、効果が目に見えにくい政策は進めたがらない傾向がある。
 私は少子化の最大の要因は、仕事と生活の調和がとれなくなっている社会構造にあると考えている。第二次世界大戦後、日本は工業化社会の道を歩み高度経済成長をしてきた。世界第2の経済大国を獲得したわけであるが、その代償として職と住が分離してしまった。長時間の通勤により主に男性が家庭にいる時間がほとんどなくなってしまった。家庭と子育ては女性の一方的負担になってしまったのである。
 子供は愛に包まれた家庭で育まなくては、健全な精神をもった大人に育つ可能性が低くなる。子育てには男女が、関わり方の役割分担はあるにしても、両方いるのが自然であり、人間が一番生きやすい状態である。この自然な状態が崩れてしまったことが少子化という現象に現れている。
 じゃあどうしたらよいか。時代を元に戻すことはできない。ならば時代にあわせて社会システムを変えていくしかない。介護保険制度は介護を社会化した。財政問題で破綻寸前だといわれているが、子育ても社会化が必要である。
 日本の人口は減少に転じているし、労働力人口も減少していくことは統計上確実である。子育てを社会化するためには、女性を男性と同じ労働力として活用して財源を捻出することしか道がない。一時的な労働力不足は、外国人労働者で賄えても長続きはしない。
 差別するわけではないが、外国人労働者の大量受入は、言語、文化、生活習慣、教育環境などが違うので、善意の外国人がほとんどであろうが、確実に日本社会と摩擦が生じる。そのコストを誰が負担するのか。経済的なコストだけではない。
 そう考えると、活用すべきは十分労働力として活用されていない女性ということになる。女性の働きやすい環境を整え、子供を産み育てることが働く上でハンディキャップにならない社会システムに作りかえていくことこそ少子化対策の最大の政策課題であり、日本が生き残る唯一の道であろうと思う。

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