ニュースの感想

教育基本法改正の意味

  • 隅田(すだ)盛和
  • at 2006/11/24 20:28:45

教育基本法改正  人間以外に見るべき資源を持たない我が国だが、歴史を見れば、常に世界をリードする国力を持ち続けている国である。その理由は、人間の質が高いということであり、教育によって質の高さが維持されていることは、どういう立場でも、異論がないと思う。我が国がこれからも、豊かな文化を育む国として世界の中で存在するためには、国民に高い教育を施す努力と、国民の学ぶ努力が欠かせない。
 私は教育問題が論議される中で、非常に残念に思うのは、道徳教育、愛国心と軍国主義とを結びつける方が多くいるということである。道徳教育、愛国心イコール軍国主義というのは、非論理的であり、戦前の日本において、道徳教育、愛国心が戦争の道具として利用された歴史があるが、その反省をしない我が国の指導者は、誰一人としていない。

 1960年代から70年代にかけて、アメリカの教育は各人の個性や自由を尊重するオールタナティブ教育理論で行われたことがある。オールタナティブ教育理論とは、全ての生徒に画一的な学校体制を強いるのはよくないとし、個人個人には違った教育があるとする理論で、伝統的な学校の枠から生徒を解放し、人間性を回復させて、学校を非管理的で自由な空間にしょうという考えである。ちなみにオールタナティブの言葉の意味は、型にはまらないということ。
 この結果どうなったか。規律を強制する手立てを失った教師の権威は低下し、校内暴力や飲酒、麻薬常習、セックス、十代の妊娠といった問題がつぎつぎと噴出したのである。児童・生徒の学力が著しく低下し、公立学校への不信が高まっていったのもこの頃である。
 教育の自由化、人間化、社会化が放任、甘やかしとなり、子供達のわがまま勝手を許し、親や教師の権威を否定し、その当然の結果として非行や犯罪の激増、学力の低下を招いたのである。

 1983年、こうした状況を改善すべく当時のレーガン大統領が日本に教育視察団を赴かせた。以後、日本の伝統的な教育方針をモデルにした教育改革が試みられ、学習面では読み書き算盤といわれるような基礎的教科に力点を置き、生活面では再び教師の指導力が求められるようになった。それが、今日のアメリカの隆盛につながっている。
 学校は子供達が社会に出るための準備期間である。厳しい教育や訓練の場では、一般社会以上に多くの規律が必要であるということ、児童生徒は指導を受ける身であり、自ずと親や教師とは異なる立場にあるということが再認識されたのである。

 教育基本法が制定された翌年の1948年6月19日、連合国軍最高司令官総司令部 GHQ の意向を受けて、教育勅語はこの日、衆参両院の決議により教育理念の部分もあわせて無効となった。
 明治維新後の我が国は文明開化により洋学が重んじられ、伝統の倫理道徳に関する教育が軽視される風潮があった。このような世相を深く憂慮された明治天皇は、徳育の振興が最も大切であるとされ、わが国の教育方針を明らかにするため明治23年1890年10月30日、教育勅語を発せられた。百年以上前のものであり、現代の我が国の体制と異にしているが、今の教育改革を考える上において、大変有益な部分を含んでいる。教育勅語は、その時の天皇制を前提にしており、また、権威づけのために中身でなく外見を仰々しく扱われ、軍国主義に利用されたという歴史がある。しかし歴史的事実を、その背景をきちんと理解した上で、良いものを、過去から未来へ受け継ぐことは、今を生きる私たちの責務なのではないかと考える。

 教育勅語には、日本人が祖先から受け継いできた豊かな感性と美徳が表され、人が生きていくべき上で心がけるべき徳目が簡潔に述べられている。教育勅語の徳とは孝行、友愛、夫婦の和、朋友の信、謙遜、博愛、修学習業、智能啓発、徳器成就、公益世務、遵法、義勇の十二である。
 これらを天皇のためにせよとし、非常事態発生のときには、天皇に対して命を捧げよというのが、現代社会には全くあわないわけだが、当時の国の体制が天皇主権であったのでそうなっているのであって、国民主権の現代では、それは愛する家族や人民が手を取り合って暮らすこの国のためと読み替えれば、なんら違和感はない。
 教育勅語は自然法の原理が表現されたものであるというのが教育基本法制定関係者の共通の認識であり、新憲法との関係で教育勅語では不十分な点を教育基本法でもって補う、という発想の下に基本法が制定されたことは、文を比べてみれば一目瞭然である。つまり、教育基本法改正は、このセットになっていた教育勅語の背景である天皇制が戦後の国民主権と合わなくなり無効になってしまった結果、欠落をしてしまった精神的部分を補おうという意味が大きいと考える次第である。


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